「SESはやめとけ」
転職活動中、何度この言葉を見たかわかりません。客先常駐・一人派遣・低年収・経歴に傷がつく——ネガティブな情報ばかりが目につく。それでも私は30代半ばで未経験からSESに入りました。
入社から1年半。チーム派遣のはずが単独派遣だった。1社目で契約終了になった。スタンバイ期間も2回経験した。 ネット記事で「SESあるある」とされる出来事を、ほぼ全部経験しました。
それでも今、私は「SESに入ってよかった」と思っています。
この記事では、SES1年半で実際に起きたことと、それでも前向きでいられる理由を、隠さず全部書きます。
私の経歴:30代半ば・未経験で大手SIer案件のSESへ
まず自分の状況を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 転職時の年齢 | 30代半ば |
| 前職 | 地方公務員 |
| 転職時期 | 2024年10月 |
| 入社後 | スタンバイ2ヶ月 → 1社目(2024/12〜2025/03)→ 2社目(2025/04〜現在) |
| 案件種別 | 2社とも大手企業の常駐案件 |
| 派遣形態 | 単独派遣(一人で客先に常駐) |
公務員からIT未経験で転職した経緯はこちらにまとめています。
想定外①:チーム派遣のはずが、単独派遣だった
入社前の面談では「現場にはチームで参画します」という説明を受けていました。未経験で不安だった私には、これは大きな安心材料でした。 先輩エンジニアと一緒に現場に入れれば、わからないことを聞ける。仕事の進め方も学べる。そう思っていました。
実際は違いました。
1社目に配属されたとき、自社からの人間は私一人でした。客先のチームに混ざる形で、自社の同僚はゼロ。2社目も同じく、私一人での参画です。
「聞いていた話と違う」——率直にそう思いました。
ただ後でわかったのですが、SES業界では「単独派遣」が珍しいことではありません。営業の方も、配属時点ではチーム派遣を想定していたケースが多く、案件の都合で結果的に単独になることはよくあるそうです。
未経験でSESを目指すなら、「単独派遣の可能性は普通にある」と最初から覚悟しておくほうが、現実とのギャップは小さくなります。
想定外②:一人派遣の「静かな孤独」
単独派遣で実際に何が起きるか。金銭面でも仕事面でもなく、心理面の話です。
入社直後、客先のチームに混ざってデスクに座ります。周りは自社(客先)の社員ばかり。皆さん仕事の話で盛り上がり、ランチも社員同士で行く。私は外部の人間として、その輪の外にいる。
具体的に困ったことは、「気軽に話しかけづらい」という空気でした。質問するときも「忙しそうだな……」と一瞬考えてしまう。雑談に混ざるタイミングが掴めない。
笑い話ですが、丸一日、挨拶以外で口を開く機会がない日もありました。 これは想定していなかった。前職の公務員時代は、職場の同僚と毎日普通に話していたからです。
孤独感に慣れるまでには数ヶ月かかりました。今は割り切れています。「ここは仕事の場で、雑談相手を求める場所ではない」と。それでも、入社直後の1〜2ヶ月は地味にしんどい時期でした。
想定外③:自分の側で「遠慮」している自分に気づく
客先のチームには、本当によくしてもらいました。質問にも丁寧に答えてくれるし、業務もきちんと教えてもらえる。社内イベントに誘っていただくこともあります。1社目も2社目も、人間関係でつらかったわけではありません。
ただ、知らないうちに自分の側で「遠慮」していました。
客先の評価会議や人事に関わる話題が耳に入ってきても、自分は当事者ではない。客先社員の昇進や異動の話に深く踏み込むのは違う気がする。客先の方針について意見を求められても、踏み込みすぎないラインを意識する——。
これは客先から線を引かれたわけではなく、「会社が違うのだから、ここは自分の領域ではない」と自然に距離を置くようになる感覚です。社員と外部メンバー、その立場の違いを自分で踏まえて動く。1年半経って身についた感覚です。
最初は気を遣いすぎて疲れる場面もありました。今は「自分の役割をきちんと果たす範囲で関わる」と割り切れています。この距離感の取り方が、SESエンジニアに自然と求められるスキルだと、1年半でわかりました。
1社目の契約終了:派遣の半数が消えた日
入社から約5ヶ月後、1社目でプロジェクト縮小が決定しました。私を含む派遣の半数が契約終了となる規模の縮小でした。
「契約終了」と聞いた瞬間の率直な印象は——「思ったより早かったな」でした。
入社から半年も経っていない。次の現場が決まるかどうか。家族の生活はどうなるか。普通なら不安が一気に押し寄せる場面です。
でも、過度な不安にはなりませんでした。 理由は2つあります。
理由① プロパー社員(客先の自社社員)から個別にフォローと評価をもらっていた
客先のリーダーから、「ちゃんとできているよ」というフィードバックをもらっていました。だから「自分の働きが評価されていない=契約終了」ではないと、自分自身が理解していました。
理由② 現場の方から、ある一言をかけてもらった
契約終了が決まった際、現場の方から 「数ヶ月スタンバイで待っていてくれたら、また呼び戻せるんだけど」 という主旨の言葉をいただきました。
冗談半分の言葉でしたが、これは大きな自信になりました。「自分は『もう必要ない』と切られたわけではない。プロジェクトの都合で、たまたま終わっただけ」——そう受け止めることができました。
少し楽観的だったかもしれません。でも「次の現場でもやっていけるだろう」という土台ができたのは、間違いなくこの一言のおかげです。
次の現場は2〜3週間で決まった
契約終了が決まってから、自社の営業から次の案件を提案されるまで、約2〜3週間でした。営業から提示された1件目の案件で即決しました。それが今の2社目です。
この経験から学んだのは、「SESは現場が消えるリスクが構造的に存在する」ということと、「会社次第で、そのリスクは十分に乗り越えられる」ということです。
未経験でSESを検討する人に伝えたいのは、「契約終了は起きうる」と理解した上で、営業のフォロー力がしっかりしている会社を選ぶことの重要性です。
スタンバイ期間:不安になる人と、ならない人
私はSES1年半の中で、スタンバイ期間を2回経験しています。
- 入社直後:約2ヶ月(2024年10〜11月)
- 育休前:約3週間(2026年3月)
スタンバイ中の給与は基本給が満額支給されました。提案された案件ごとに客先との面談同席(スキルシート確認・技術ヒアリング)はありますが、それ以外の時間は自習が中心。強制研修や毎日の出社義務はなく、自分の判断で自由に学習時間を使える期間でした。
スタンバイ中の不安感は人による
私自身はスタンバイ期間に不安を感じませんでした。「足りないものだらけだから、勉強したいことしかない」状態だったからです。実際、入社直後の2ヶ月でJava Bronze・AWS CLF・Java Silver・AWS SAAの4資格を取得しました。
→ 子育てしながら転職後約1年半で13資格を取得したロードマップ
ただ、同時入社の方は1ヶ月を超えたあたりから不安そうにしていました。「次の現場、本当に決まるのか」「給与が満額でなくなったらどうしよう」——気持ちはわかります。
冷静に振り返ると、30代半ば・未経験という私の経歴で「全く不安がなかった」のは少し楽観的すぎたかもしれません。それでも、不安になる時間があったら手を動かす——この姿勢でスタンバイ期間を乗り切れたことは、自分にとっては正解でした。
自社との接点:会話は年2回・帰社日は年4回
これも入社前は想像していなかったことです。
自社のチームリーダーと「会話」する機会は、基本的に年2回の査定面談のみでした。普段のやり取りは月1回提出する報告書を通して行います。リアルタイムでチャットや通話で気軽に相談する文化ではありません。
自社全体の動きを把握する場としては、年4回程度の帰社日(定例会議)があります。「帰社日」と呼ばれていますが、基本的にオンライン開催で物理的に自社オフィスに集まるわけではありません。同期や他チームの同僚の顔を見るのも、画面越しがメインです。
「自社の先輩から日常的に仕事を教わる」「自社の同僚と毎日切磋琢磨する」——そういう環境は、SESにはほぼありません。接点の薄さを前提に、自分で学び・自分で動く姿勢が要求される働き方です。これは覚悟しておくべき現実です。
営業のフォローという信頼の源
ただ、私の会社では営業の方が月1ペースで連絡をくれます。
「残業はどうですか」「困りごとはないですか」——形式的な確認のように見えて、これがSESにおける「自社とのつながり」の生命線でした。
特に印象的だったのは、育休前の調整です。
「育休前に少しスタンバイになっても構いません」と相談したところ、最大限の配慮をしてくれました。「営業の人が申し訳ないくらいエンジニアに気を遣ってくれる」——これは大げさではなく、本当にそう感じる場面が何度もありました。
未経験でSESを目指すなら、面接で「営業のフォロー頻度はどれくらいですか」を聞くことを強くおすすめします。SESの良し悪しは、営業の質で半分以上決まると言ってもいいくらいです。
査定と資格:自己評価ベース+資格は評価対象
ここはSESを目指す方が一番気になるところかもしれません。昇給はどう決まるのか。
私の会社の場合:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 査定の頻度 | 年2回 |
| 査定方法 | 自己評価ベース+自社チームリーダーが評価 |
| 評価項目 | 資格取得・現場での貢献・自己学習など |
| 昇給 | 査定結果を数値化・ランク分け |
| ランク | 人数割合が決まっており、他社員との相対評価 |
特定の資格取得は、査定の数値に直接影響しました。加えて、「資格を取っている=自己学習ができている」という印象が自社のチームリーダーに伝わり、人物評価としてもプラスに働きました。
リーダーに伝える手段は、**月1回提出する報告書でした。資格を取得した月は、報告書に必ず記載してアピールするようにしていました。普段の会話の機会がほぼないSESだからこそ、月1の報告書は数少ない「自分を見せる場」**になります。資格取得は、その場で最も伝わりやすい客観的な実績でした。
入社1年半で13資格を取った効果は、確実にありました。
→ 子育てしながら転職後約1年半で13資格を取得したロードマップ
ただし、昇給ランクの中での自分の順位は教えてもらえません。昇給通知の数値から「だいたいこのランク」と推測する形です。SESで給与を上げたいなら、「資格取得で査定の数値を稼ぐ」のが最も確実な手段だと、私は実感しています。
SESに入ってよかったこと
ネガティブな話を続けてきましたが、私はSESに入ってよかったと思っています。
公務員時代より心理的に楽
公務員時代は、業務上「他人の生命に関わる責任」を負う場面がありました。SESは責任がないわけではありませんが、前職と比べると心理的にはずっと楽です。
大手企業の内部に触れられる
2社とも大手企業の案件でした。大手企業のシステム構成・運用・意思決定プロセスを間近で見られたことは、純粋に学びになりました。普通に転職して大手企業に入るには高い壁がありますが、SESなら最初から大手企業の現場に入れる——これは想定外のメリットでした。
短期間で多様な技術に触れられる
1社目と2社目では、扱う技術スタックが違いました。1〜2年ごとに新しい技術環境に身を置けるのは、若手・未経験エンジニアにとっては大きな成長機会です。これはSESだからこそ得られる経験だと思っています。
子どもとの時間を守れた
転職の最大の目的だった「子どもの成長をそばで見る」は、完全に達成できています。客先常駐とはいえ、転勤を伴うものではありません。固定残業代制でもないため、定時で帰っても申し訳なさはありません。家族との時間が確実に増えました。
今後のキャリア:SESを長く続ける選択
私は「子どもがある程度大きくなるまではSESで良い」と考えています。
理由は、子どもの成長期に転勤・長時間労働を増やしたくないからです。SESは現場が変わるリスクこそありますが、引越しを伴う転勤は基本ありません。生活の安定という意味では、子育て期にはむしろ向いている働き方だと、1年半経って思うようになりました。
将来的にはフルスタックエンジニアとして、特にセキュリティ分野を深く学びたいという目標があります。SESの現場で多様な技術に触れながら、自分の専門領域を作っていく——これが今の戦略です。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| SES勤務期間 | 1年半(2024年10月〜現在) |
| 経験した現場 | 2社(大手企業の常駐案件) |
| 派遣形態 | 単独派遣 |
| スタンバイ経験 | 2回(入社直後2ヶ月・育休前3週間) |
| 1社目で経験 | プロジェクト縮小による契約終了 |
| 査定 | 年2回・自己評価ベース・資格取得は評価対象 |
| 自社との接点 | 営業の月1フォロー+月1の報告書+年2回の査定面談+年4回の帰社日 |
| 心境 | 後悔なし。SESに入ってよかった |
SESを目指すあなたへ
「SESはやめとけ」と書いてあるネット記事はたくさんあります。それでも私は1年半経って、こう言えます。
「会社次第で、SESは未経験者の最良の選択肢になる」と。
そのために大事なのは1つだけです。
営業のフォロー力がしっかりしている会社を選ぶこと。
- 月1のフォロー連絡があるか
- 現場でトラブルが起きた際の対応が早いか
- 合わない現場をすぐ変えてくれる姿勢があるか
- 育休・スタンバイ時の調整に柔軟か
面接で必ず確認してください。SESの良し悪しは、営業で半分以上決まります。
短期間で多様な技術に触れられるのは、SESの最大の強みです。未経験で「まず現場に入る」ことが目的なら、SESは十分に合理的な選択肢だと、1年半経った私は断言できます。
転職前に私が使ったUdemy講座はこちらにまとめています。
→ IT転職前にエンジニアの友人に薦められて受けたUdemy7講座
よくある質問(FAQ)
Q1. SESの「単独派遣」は本当に普通ですか?
普通にあります。私は2社とも単独派遣でした。入社前の説明ではチーム派遣のはずだったのですが、案件の都合で単独になりました。SESを目指すなら、「単独派遣の可能性は普通にある」と最初から覚悟しておくのがおすすめです。これは会社の良し悪しというより、業界の構造的な実態に近いと感じています。
Q2. 一人派遣で孤独になりませんか?
正直、案件参画直後の1〜2ヶ月は地味にしんどかったです。丸一日、挨拶以外で口を開かない日もありました。ただ、「ここは仕事の場で、雑談相手を求める場所ではない」と割り切れるようになると気にならなくなります。雑談相手が必要なタイプの方には、単独派遣は少しつらいかもしれません。
Q3. 契約終了になったら、本当に次の現場は決まりますか?
私の場合、契約終了が決まってから次の案件提示まで約2〜3週間でした。提示された1件目で即決まりました。ただし、これは自社の営業が機能しているかどうかに大きく依存します。営業のアサイン力が弱い会社だと、スタンバイが長期化するリスクがあります。
Q4. スタンバイ期間中の給与はどうなりますか?
私の会社では基本給は満額支給されました。会社から求められたのは自習のみで、強制研修や営業同行はありません。スタンバイ中の給与体系は会社によって異なるので、入社前に必ず確認することをおすすめします。
Q5. SESで給与を上げるには何が一番効きますか?
資格取得です。私の会社では特定の資格取得が査定の数値に直接影響しました。加えて、「資格を取っている=自己学習ができている」という印象が自社チームリーダーに伝わり、人物評価にもプラスでした。昇給ランクは相対評価なので、自分の数値を上げる手段として資格は最も確実です。
→ 子育てしながら転職後約1年半で13資格を取得したロードマップ
Q6. SESの会社選びで一番重視すべきことは何ですか?
営業のフォロー力です。SESエンジニアにとって、自社との接点はほぼ営業経由になります。月1のフォロー連絡があるか・現場トラブルへの対応が早いか・育休やスタンバイ時の調整に柔軟か——面接で必ず確認してください。営業の質でSES生活の質は半分以上決まると私は実感しています。
Q7. 未経験でもSESでやっていけますか?
やっていけます。私自身、30代半ば・未経験でしたが、1年半経った今も問題なく続けています。「合わない現場はすぐに変えてくれる」配慮がある会社を選べば、未経験のリスクは大幅に減らせます。会社選びの段階で、この姿勢があるかを必ず確認してください。
Q8. SESを「踏み台」として考えるべきですか?それとも長く続けるべきですか?
「SESは踏み台にすべき」という意見はネット上でよく見ますが、私はそうは思いません。私がSESを選んだ理由は、短期間で多くの技術に触れられる可能性でした。これは踏み台論と似て見えますが、本質は違います。「早く抜けるため」ではなく、「SESにいる時間を最大限活用するため」です。
私自身は、子どもの成長期は転勤・長時間労働を避けたいので、SESを長く続ける選択をしています。子育てが落ち着いてキャリア勝負したい時期になったら、自社開発や事業会社への転職を考えるかもしれません。それでも目標はフルスタック+セキュリティ専門化であって、「SESから抜けること」自体ではありません。
「いつ抜けるか」より「何のためにいるか」を自分で決めることのほうが、SESキャリアでは大事だと思っています。
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