Skip to content
Go back

SES・SIer・自社開発・受託開発の違いを未経験向けに解説【私がSESを選んだ理由も】

目次

「IT業界に転職したいけど、SES・SIer・自社開発・受託開発って何が違うの?」——求人サイトを見ていると、この4つの言葉が並んでいて、正直どれも似たような説明に見えます。

私は30代半ば・公務員からIT未経験でSES企業に転職しました(経緯は公務員を辞めてIT未経験でSESエンジニアに転職した話にまとめています)。転職活動で最初につまずいたのが、まさにこの4つの言葉の違いでした。

この記事では、それぞれが何を指すのか・未経験にとってどこが現実的な入り口なのかを整理し、あわせて私がSESを選んだ理由も改めて書きます。

結論:4つの違いを一言で

先に結論です。

何をする会社か客先常駐未経験の入りやすさ
SESエンジニアを他社の現場に送り出す(契約は準委任または労働者派遣)ほぼ常駐◎ 最も間口が広い
SIer顧客のシステムを企画・開発・運用する(元請け〜下請けまで階層あり)会社による(プライムは自社勤務中心、下請けは常駐が多い)△ 大手プライムは狭き門、下請け系はSESに近い
自社開発自社サービス・自社プロダクトを開発するなし(基本は自社オフィス)△ 求人自体が少なく、実績を求められやすい
受託開発顧客から依頼されたシステムを、自社内で開発して納品する基本なし(自社開発に近い)△〜○ 会社の規模・案件次第

未経験にとって一番間口が広いのはSESです。理由は後述しますが、「まず現場に入って経験を積む」という発想がSESの仕組みそのものと相性がいいからです。

そもそも「SES」「SIer」「自社開発」「受託開発」とは何か

言葉の整理から始めます。

SES(システムエンジニアリングサービス)

SES企業は、自社に所属するエンジニアを他社の開発現場に送り出す会社です。給料はSES企業から支払われますが、実際に働く場所は客先(発注元やさらにその先の企業)というのが基本の形です。

契約形態は準委任契約が一般的とされますが、労働者派遣契約で客先に入るケースも珍しくありません(私自身、実際は派遣契約で客先に入っています)。準委任は「成果物」ではなく「稼働時間・業務の遂行」に対して対価が支払われる契約で、指揮命令権は自社(SES企業)に残るのが建前です。一方、労働者派遣は指揮命令権が客先に移る契約で、法律上はまったく別のカテゴリです。ただ、実際の働き方(客先に常駐して指示を受けながら働く)という点では大きな違いを感じにくく、「SES」という呼び方自体が、契約形態を問わず客先常駐スタイル全般を指す業界用語として使われている面があります。

ここで誤解しやすいのが、「労働者派遣=不安定な派遣社員」というイメージです。労働者派遣契約は、あくまでSES企業(雇用主)と客先企業との間の契約であり、エンジニア自身がSES企業に正社員として雇用されているかどうかとは別の話です。実際、SES企業に正社員として採用されたうえで、客先には労働者派遣契約で送り出される、というケースは普通にあります。私自身も正社員としての雇用です。

さらに、SES企業だからといって客先常駐案件しかやっていないとは限りません。私が所属する会社も、客先常駐(SES)と並行して請負契約の案件を持っています。「SES企業」という看板と、実際の事業内容が完全に一致するとは限らない、というのは覚えておいて損はないポイントです。

SIer(システムインテグレーター)

SIerは、顧客企業のシステムを企画・設計・開発・運用まで一括して請け負う会社です。「元請け(プライム)」「一次請け」「二次請け」……という多重下請け構造になっていることが多く、同じ「SIer」でも立ち位置によって働き方が大きく変わります。

  • 元請け(プライムSIer):NTTデータ・野村総合研究所(NRI)など、顧客企業と直接契約を結ぶ立場のSIerです。顧客の業務要件をヒアリングして要件定義・基本設計といった上流工程を担い、実際のコーディングなど下流工程は一次請け・二次請けの協力会社(SIerやSES企業)に発注することが多いです。案件の規模が大きく、金融機関や官公庁のシステムを担当することも珍しくありません。勤務は自社オフィスが中心ですが、プロジェクトによっては顧客先に常駐して要件のすり合わせを行うこともあります
  • 下請けSIer:元請けから業務を受けて設計・開発を行う立場です。元請けの現場に常駐して開発を進めることも多く、実質的にSESと同じような客先常駐スタイルになることも多いです

「SIerに入る」と言っても、どの階層かによってSES的な働き方になるか、自社勤務の上流工程寄りになるかが変わる、というのがポイントです。

また、規模の大きいSIerになると、顧客システムの受託だけでなく自社製品・自社サービスを開発する部門(いわゆる自社開発部門)を社内に持っていることも珍しくありません。私自身、育休に入る前に派遣されていた現場はまさにSIerの自社開発部門で、「SIerだから客先常駐」と単純に割り切れるものではないと実感しました。

自社開発

自社開発企業は、自社が持つサービス・プロダクトを自分たちで開発・運用する会社です。ネット系企業やスタートアップに多く、「作ったものが自社のサービスとしてユーザーに届く」のが特徴です。客先常駐がなく、自社オフィス(またはリモート)で働くのが一般的です。

受託開発

受託開発企業は、顧客から依頼されたシステムを、自社内で開発して納品する会社です。SIerと似ていますが、SIerが顧客企業に常駐して開発することもあるのに対し、受託開発は自社内で開発を完結させ、成果物を納品するスタイルが中心になります(請負契約が基本)。

大きい会社ほど、複数の事業を同時にやっている

ここまで4つに分けて説明しましたが、実際の会社はここまできれいに分かれていません。SES企業が受託開発の案件を持っていたり、SIerが自社製品の開発部門を持っていたりと、規模の大きい会社ほど複数の事業を組み合わせて展開しているのが実態です。

「この会社はSES専業」「この会社はSIer専業」と単純に色分けできるとは限らないので、会社説明会や求人票を見るときは、その会社全体の分類より「自分がどの部署・どの案件に配属されるか」を確認する方が実態に近づけます。この4分類は、あくまで働き方や契約の違いを理解するための整理だと捉えてください。

未経験の入りやすさ・年収レンジを比較する

未経験にとって一番気になるのは「実際どこなら入れるのか」「入った後の年収はどのくらいか」だと思います。求人サイト各社の公開情報をもとに、未経験からスタートした場合の年収レンジの目安を整理しました。

未経験時の年収目安入りやすさの理由
SES約300万円〜450万円「まず入社してから現場で育てる」前提の採用が多く、求人数も圧倒的に多い
SIer(下請け中心)約300万円〜400万円SESに近い形で未経験可の求人がある。大手プライムSIerの新卒・未経験枠は狭き門
自社開発約280万円〜350万円「自社開発」を明記した未経験可求人自体が少なく、ポートフォリオ等の準備を求められやすい
受託開発約280万円〜350万円会社規模・案件によって幅が大きい。中小の受託開発企業は未経験採用に積極的なところもある

⚠️ 年収は本当にピンキリです。 上記はあくまで求人・転職メディア各社の公開情報から見えるおおよその目安で、会社ごとの給与テーブルやマージン率(SESの場合)によって大きく変わります。参考にした情報源は記事末尾にまとめています。

数字だけ見るとSESが極端に低いわけではありません。むしろポイントは、未経験可の求人の「数」が段違いに多いことです。自社開発・受託開発は求人自体が少なく、応募のハードルとして「ポートフォリオ」「何らかの実績」を求められることが多いため、実務経験ゼロの状態からいきなり狙うのは難易度が高くなります。

未経験ならどれが現実的か

私の考えでは、優先順位はこうなります。

  1. とにかく早くIT業界に入りたい・実務経験を積みたい → SES(求人数が多く、未経験前提の採用フローが確立している)
  2. 上流工程・大手案件に関わりたい → プライムSIerの新卒枠・第二新卒枠(狭き門だが、入れれば安定感がある)
  3. 自社サービスに関わりたい・Web系の技術を使いたい → 自社開発(ただし未経験のうちはポートフォリオ等の準備が必須)
  4. 納品型のものづくりに関わりたい → 受託開発(会社の規模・案件次第で未経験の受かりやすさが変わる)

「まずは業界に入ることを優先し、実務経験を積んでから2社目以降でキャリアを選び直す」という考え方であれば、求人数の多いSESが最も現実的な入り口になりやすいです。

ただし、この整理はあくまで「傾向」であって絶対的な区分けではありません。私自身はSES企業に所属していますが、実際に派遣された案件はSIerの新規自社開発プロジェクトで、基本設計工程からサブチームリーダーという立場で直接携わりました。「SESだから上流工程・自社開発案件に関われない」というわけではなく、どの案件に配属されるかで経験できる内容は大きく変わります。 雇用形態の分類だけでなく、配属先の案件内容も含めて考える必要がある、というのが実感です。

私がSESを選んだ理由

私自身も、転職活動を始めた時点でこの4つの選択肢を検討しました。

30代半ばという年齢で、実務経験はゼロ。自社開発や受託開発の企業に応募するには、ポートフォリオや何らかの実績が必要になりそうでした。ゼロから準備して挑むには時間がかかりすぎる——そう感じて、「さっさとSESに入って、現場で経験を積む」という判断をしました。

年齢的な焦りが大きな決め手だったので、20代であれば自社開発やSIerの新卒枠を時間をかけて狙うという選択肢も十分にありえたと思います。この判断に至った詳しい経緯や転職活動の全記録は、公務員を辞めてIT未経験でSESエンジニアに転職した話に書いています。

SESに入って感じたリアル

「SESを選んでどうだったか」については、実際に18ヶ月働いた記録を別記事にまとめています。

SESに絞って詳しく知りたい方は、あわせて読んでみてください。

まとめ:まず求人数の多いところから経験を積む

  • SES:エンジニアを他社現場に送る会社。客先常駐が基本。求人数が多く未経験の間口が最も広い
  • SIer:顧客システムを請け負う会社。元請けか下請けかで働き方が大きく変わる
  • 自社開発:自社サービスを開発する会社。客先常駐なし。未経験可求人は少なめ
  • 受託開発:顧客の依頼で開発し納品する会社。自社内完結が基本。会社次第で未経験の受かりやすさが変わる

未経験のうちは、この4つのどれが「正解」ということはありません。求人数が多く、未経験前提の採用フローが整っているところから、まず業界に入るのが最短ルートになりやすい、というのが私の実感です。

よくある質問(FAQ)

Q1. SESとSIerの違いは何ですか?

SESは「エンジニアを他社現場に送る」仕組みそのものを指す言葉(契約は準委任または労働者派遣)で、SIerは「顧客のシステムを企画・開発・運用する会社」を指す言葉です。SIerの中でも下請け企業は、実質的にSESと同じような客先常駐スタイルになることが多く、境界はあいまいです。

Q2. 未経験なら自社開発を目指すべきですか?

技術の幅や年収水準では自社開発に魅力がありますが、未経験可の求人自体が少なく、ポートフォリオなど何らかの実績を求められることが多いです。時間をかけて準備できるなら選択肢になりますが、早く業界に入りたい場合はSESの方が現実的です。

Q3. SESは本当に未経験でも入れますか?

はい。SESは「入社後に現場で育てる」前提の採用が多く、未経験可の求人数が他の形態より圧倒的に多いです。私自身も30代半ば・実務未経験からSES企業に入社しました。

Q4. 年収が一番高いのはどれですか?

一般論としては自社開発・大手プライムSIerが高めの水準になりやすいですが、これは未経験時点というより経験を積んだ後の話です。未経験スタート時点での差は求人ごとのばらつきが大きく、一概には言えません。

Q5. SIerの「元請け」「下請け」は何が違いますか?

元請け(プライム)は顧客と直接契約し、要件定義や設計などの上流工程を担うことが多く、自社オフィス勤務が中心です。下請けは元請けから業務を受けて開発を行い、客先常駐になることも多く、実質的にSESに近い働き方になります。

Q6. 1つの会社が複数のカテゴリに当てはまることはありますか?

よくあります。SES企業が受託開発の案件を持っていたり、SIerが自社製品の開発部門を持っていたりと、規模の大きい会社ほど複数の事業を組み合わせて展開しています。会社全体の分類より、自分が配属される部署・案件がどれに近いかを確認する方が実態に近づけます。


関連記事

年収レンジの参考情報源

PR