「SES やめとけ」——転職を調べ始めると、必ずこの言葉にぶつかります。
私は30代半ば・未経験で公務員から大手SES企業に転職して、18ヶ月働いてきました(開発案件・サブリーダー経験を経て、現在は育休中です)。結論から言うと、「やめとけ」と言われる理由は半分正しくて、半分は誤解です。
この記事では、「やめとけ」の代表的な理由6つを、現役の実体験と同期の退職例も含めて○△×で全部検証します。良かったことだけを書く記事ではありません。
先に結論:「やめとけ」は誰に向けた言葉かで変わる
| 「やめとけ」の理由 | 私の判定 | ひとこと |
|---|---|---|
| ① 給料が低い・中抜きされる | ○ ほぼ事実 | 単価と給与の差は大きい。ただし上げる手段はある |
| ② 案件ガチャがある | △ 事実だが誤解あり | 大きい組織なら配属ガチャはどこにでもある |
| ③ スキルが身につかない | △ 案件次第 | 同期に両方の実例がいた |
| ④ 孤独・帰属意識がない | ○ 事実 | 単独派遣・自社との会話は年2回 |
| ⑤ 客先常駐は立場が弱い | △ 「遠慮」はある | 理不尽な扱いは受けていない |
| ⑥ ブラックが多い・経歴詐称 | × 私の周りでは違った | 残業月10時間・詐称は聞いたことがない |
順番に、根拠を書いていきます。
① 給料が低い・中抜きされる → ○ ほぼ事実
まず一番よく言われるお金の話。これはほぼ事実です。
私の会社は還元率(単価の何%が給与になるか)を開示していませんし、そもそも単価連動型の給与ではありません。基本給ベースで見れば、単価の半分以下です。私自身、公務員からの転職で年収は100万円以上下がりました(転職の経緯はこちら)。
ただし、補足が2つあります。
1つ目。未経験者は「実務経験を金で買っている」段階だということ。未経験を採用して現場に出すまでのコストは会社が持っているので、初期の給与が低いこと自体は構造として理解できます。問題は「その後も上がらない会社」に居続けることです。
2つ目。上げる手段はあります。私の会社では資格が査定の評価対象で、私は18ヶ月で13資格を取りました(取得ロードマップ)。単価交渉の材料にもなるので、SESで給与を上げたいなら資格と現場評価の両輪が現実解です。どの資格から取るかはSES未経験におすすめの資格3選にまとめています。
② 案件ガチャがある → △ 事実だが誤解あり
案件の希望は、ある程度聞いてもらえます。ただし実態としては、「そのとき空いている案件」の面談が組まれる傾向があります。希望とタイミングが合えば通るし、合わなければ流される。これが実感です。
ここで、あえて別の視点を出します。私は前職が公務員でしたが、部署の希望を出しても、そのとおりに配属されたことはありませんでした。一定規模以上の組織なら、個人の希望が通りにくいのはSESに限った話ではないんです。組織が大きくなるほど、配属は「組織の都合」で決まる。SESの案件ガチャは、それが「客先」という形で見えやすくなっているだけだと思っています。
だから私の結論はこうです:「案件ガチャが嫌だからSESはやめとけ」は少しずれている。特定の言語や分野だけをやりたいのなら、SESをやめるのではなく、特定のシステムを自社開発している小規模な会社を選ぶべきです。
③ スキルが身につかない → △ 案件次第(同期の実例を2つ)
これは正直に、両方の実例を書きます。どちらも私の同期・同僚の話です。
- スキルが身につかない案件に当たった同期:まさに「テスターや事務作業ばかりでスキルが身につかない」と愚痴っていて、3〜4ヶ月で退社しました。「やめとけ」派の言うことは、実際に起こります。
- 開発案件に入れたが、ついていけなかった人:未経験ながら開発案件にアサインされたものの、現場のレベルに追いつけず、2ヶ月で現場を変えてもらっていました。この人は入社前に職業訓練校で学習していた人です。
この2例から言えることが2つあります。
1つ、案件ガチャは実在する。ただし当たりを引いても、実力が足りなければ続かない。つまり「良い案件に入ること」と「入る前の準備」はセットです。私は転職前にエンジニアの友人の伴走付きでUdemyで7講座を完走してから入りました。独学に自信がない人はデイトラのようなサポート付き教材も選択肢だと思います。
2つ、注目してほしいのは、ついていけなかった人が「現場を変えてもらえた」ことです。SESは合わない現場から抜けるルートが構造的に存在します。これは自社開発企業の配属ミスマッチより回復が速い、SESの数少ない利点です。
④ 孤独・帰属意識がない → ○ 事実
これは事実です。私は「チーム派遣のはず」が単独派遣でしたし、自社の人と会話するのは年2回程度、帰社日は年4回です。
一人現場の静かな孤独、客先の輪への入り方、契約終了で派遣の半数が消えた日のこと——この部分は体験記として別記事に全部書いたので、そちらをどうぞ:SESエンジニアになって1年半でわかった現実。
「会社に所属している安心感」を重視する人にとって、ここはSESの一番つらい部分だと思います。逆に、私のように組織の人間関係より作業に集中したい人には、むしろ楽です。公務員時代より心理的にずっと楽になりました。
⑤ 客先常駐は立場が弱い → △ 「遠慮」はある
「常駐先で理不尽な扱いを受ける」という意味での立場の弱さは、私は経験していません。プロパー社員(客先の自社社員)からフォローも評価もしてもらえました。
ただ、「発言や質問をするときに、どこかで遠慮している自分がいる」のは事実です。お客様の環境で働いている以上、この感覚は消えません。立場の弱さというより「外部の人間である自覚」が常にある、という表現が近いです。
⑥ ブラックが多い・経歴詐称 → × 私の周りでは違った
- 残業は月10時間程度。たまに遅くなる日はありますが、公務員時代のほうがよほどブラックでした
- 経歴詐称は、自社でも現場でも聞いたことがありません
- 育休も取れました(第2子で12ヶ月取得中です)
もちろん「業界にブラックSESが存在しない」とは言いません。存在するからこそ悪評が立っています。ただそれはSESという業態の問題ではなく、会社選びの問題です。次のチェックリストで見分けてください。
地雷SESを避けるチェックリスト
私が転職活動時に見ていたポイント+入社後に「これを見ておくべきだった」と思ったポイントです。
- 資格が評価制度に組み込まれているか(給与を自力で上げる手段があるか)
- スタンバイ(待機)中の給与が満額出るか(ここを渋る会社は避ける)
- 営業のフォロー頻度(プロジェクト参画後も、営業が定期的に現場の状況を気にかけてくれるか。私の場合は営業がこまめに声をかけてくれて、それが一番の安心材料でした)
- 研修や資格取得支援の実績が具体的か(「充実」とだけ書く会社より、取得数や合格率を出す会社)
- 面接で残業時間の実数を聞いたときに即答できるか
- 給与に固定残業代(みなし残業)が含まれていないか(私が転職活動で個人的に避けた条件です。基本給を大きく見せる会社は、残業の実態も疑ってかかったほうがいいと思っています)
会社選びの入口となる転職サイト・エージェントは未経験IT転職で使った5サービスの正直レビューにまとめています。
結論:「やめとけ」が当てはまる人は、実はあまりいない
18ヶ月やってきた私の実感では、「SESだからやめとけ」が当てはまる人はほとんどいません。案件ガチャも配属の不自由も、規模の大きい組織なら形を変えてどこにでもあるからです。
ただし、次の人はSES以外を選んだほうが幸せだと思います。
- 特定の言語・分野だけをやりたい人 → 小規模で特定システムを自社開発している会社へ
- 年収を一時的にも下げられない人 → 未経験IT転職自体を慎重に(SESに限らず初年度は下がります)
- 会社への帰属感が心の支えになる人 → 自社勤務型の企業へ
逆に、未経験からITに入る入口・環境の変化に耐えられる人・資格や実務で淡々と積み上げられる人にとって、SESは今でも現実的な選択肢です。少なくとも私は、年収が下がっても、公務員を辞めてSESに入ったことを後悔していません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「SESはやめとけ」は本当ですか?
半分本当です。給料が単価に比べて低いこと、孤独があることは事実でした。一方で、案件ガチャは大きな組織なら形を変えて存在しますし、残業月10時間・経歴詐称なしの環境も実在します。業態の問題と会社選びの問題を分けて考えるべきです。
Q2. 案件ガチャはどう対策すればいいですか?
完全な回避はできません。希望は聞いてもらえますが「そのとき空いている案件」が優先される傾向があるためです。対策は、入る前の学習で「開発案件にアサインしたい」と思われる状態を作ること、そして資格で希望を通す材料を増やすことです。合わない現場は変えてもらえるケースもあります。
Q3. 未経験でもSESでやっていけますか?
準備次第です。私の周りでは、準備をしてきた人でも開発現場のレベルについていけず現場変更になった例がありました。逆に言えば、現場を変えてもらって再挑戦できるのがSESです。入社前にプログラミング学習を一通り終えてから入ることを強くおすすめします。
Q4. SES企業はどこを見て選べばいいですか?
①資格が評価制度に入っているか ②待機中の給与が満額か ③営業のフォロー頻度 ④研修・資格支援の実績が数字で出ているか ⑤給与に固定残業代が含まれていないか、の5点です。面接で質問して即答できない会社は避けるのが無難です。